自筆証書遺言書保管制度とは?

更新日:2022年10月24日


 遺言書は、残されたご家族や大切な方にご自身の想いを残す最後のお手紙などとも言われるように、相続をめぐる紛争の防止に役立ちますが、いざ遺言書を書くとなると、「難しそう」とか「大変そう」と感じて敬遠してしまうこともあるかもしれません。でも、遺言書は、あなたがお亡くなりになった後に、財産の処分や相続分の指定などについて法的な効果を持ちますので、相続であなたの意思を実現させたい場合には、遺言書を書いておくことが大切です。
 また、せっかく遺言書を書いていたとしても、その遺言書がしっかりと保管されておらず、あなたがお亡くなりになった後に相続人等に発見されなかったりしては、意味がありませんよね。それに、一部の相続人等に改ざんされるおそれを指摘されることもあります。
 そんな心配を解消するため、手軽で自由度が高いという自筆証書遺言のメリットはそのままに、あなたが自筆で作成した遺言書を法務局に預けることができる、そんな制度があるのをご存知ですか。
 その制度とは、自筆証書遺言書保管制度です。名前を聞いて、難しそうだと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、難しいと思ってこの制度を利用しないのは、もったいないと思いますので、ぜひご利用ください。
 なお、法務省ホームページにも詳しい説明がでていますので、ご覧ください。

 

遺言書を書いておく必要性が高い場合とは?

 遺言書を書いておく必要性が高い場合とは、どういう場合でしょうか。
 「自分が亡くなった後、残された家族が財産で争わないようにしたい。」ときはもちろんですが、以下のような場合が考えられます。
 

こどもがいないご夫婦の場合

 あなたが亡くなられて、遺言書がない場合や遺産の分割のための協議を行わない場合には、法律の定める相続人(法定相続人)が、法律の定める相続分(法定相続分)に従って相続をすることになります。
 例えば、こどもがいらっしゃらないご夫婦の場合は、遺言書を書いておく必要性が高いと言われています。
 ご夫婦の両親は既に亡くなっている状態で、夫が亡くなったとすると、“妻”及び“夫の兄弟姉妹”が法定相続人になります。
 もし、夫が全財産を妻に残したい(又は、妻が全財産を夫に残したい。)という思いがある場合には、遺言書を書いておく必要性が高いということになります。
 

法定相続人でない方に財産を贈りたい場合

 あなたが法定相続人でない方に財産を贈りたいという思いがある場合も、遺言書を書いておく必要性が高いといえます。例えば、以下のような事例が考えられます。

例➀:いわゆる内縁のご夫婦の場合

 婚姻届を出していない、いわゆる内縁のご夫婦の場合には、例えば、内縁の夫が全財産を内縁の妻に残したい(又は、内縁の妻が全財産を内縁の夫に残したい。)という思いがあっても、内縁の妻や夫には相続権がありません。
 このような場合も、内縁の妻に財産を遺贈する旨の遺言書を書いておく必要性が高いといえます。

例➁:相続人以外に財産を譲りたい人がいる場合

 生前に特にお世話になった方へのお礼として、財産の一部を譲りたいとか、法人などに寄付をしたいといった場合もあると思います。
 このような場合も、その旨の遺言書を書いておく必要性が高いといえます。

法務局に遺言書を預けた場合のメリットは?

 遺言書には、自筆証書遺言書や公正証書遺言書などがありますが、法務局でお預かりする遺言書は自筆証書遺言書です。
 自筆証書遺言書は手軽で自由度が高いという特徴がありますので、遺言書を書いておく必要性が高い方にとっても便利です。自筆証書遺言書保管制度ができる前までは、書き上がった自筆証書遺言書は自宅等に保管しておく方法しかありませんでしたが、新たな選択肢として、法務局(遺言書保管所)に預けておくことができるようになりました。
 それでは、自筆証書遺言書保管制度を利用した場合には、遺言者や相続人等にとって、どのようなメリットがあるか見てみましょう。

遺言者のメリット

 自筆証書遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けた場合、遺言者にとっての主なメリットとしては、以下のものがあります。

  • 遺言書の紛失・亡失を防ぐことができます。
  • 相続人等の利害関係者による遺言書の破棄、隠匿、改ざん等を防ぐことができます。
  • 遺言書の保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて、法務局の遺言書保管官による外形的なチェックが受けられますので、方式が不備で無効になるおそれがありません。
  • 遺言書は、原本に加え、画像データとしても長期間適正に管理されます。

相続人や受遺者等のメリット

 自筆証書遺言書を法務局(遺言書保管所)に預けた場合、相続人や受遺者等の主なメリットとしては、以下のものがあります。

  • 相続開始後、家庭裁判所における検認が不要です。「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。詳しくは、裁判所ホームページをご覧ください。
  • 相続開始後、法務局(遺言書保管所)から、相続人等に遺言書を保管していることをお知らせすることができますので、遺言書の内容を記載した証明書(遺言書情報証明書)の交付請求等の手続を忘れずに行えるようになります。このお知らせには、「関係遺言書保管通知」と「遺言者が指定した方への通知(以下「指定者通知」といいます。)」の2種類があります。関係遺言書保管通知や指定者通知についてもっと詳しく知りたい方は、法務省ホームページをご覧ください。
  • 遺言書の原本が保管されている法務局(遺言書保管所)であるか否かにかかわらず、全国どこの法務局(遺言書保管所)においても、モニターによる遺言書の閲覧や、遺言書情報証明書の交付が受けられます。

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