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一般に,土地を区切る境目のことを「境界」とか「境界線」などといいます。境界紛争を扱う場合には,この「境界」という言葉は,実はいろいろな意味を含んでいます。専門家の間では,そのいろいろな意味を明確に区別するために「筆界」,「所有権界」という言葉を使用しています
(具体例はこちら)。筆界特定制度は「筆界」を探し出す制度です。境界紛争の問題点が「所有権界」である場合もありますので,制度の利用については法務局や弁護士,土地家屋調査士など専門家にご相談ください。
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筆界特定手続においては筆界を特定するために測量を行うことがあるのですが,測量を専門家に委託して行う場合,委託費用は,申請人が負担することとされています(不動産登記法第146条)。 測量費用については一律ではなく,それぞれの事案において,筆界特定に必要と考えられる内容で費用を積算します。そのため,筆界特定手続の申請がされ,その測量を行う必要があると判断する時期までは具体的な金額は分かりませんが,当局においては,概ね50万円から80万円くらいの間のものが多いところです。
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申請人が申請手数料として納付する額は,固定資産課税台帳に登録された土地の価格に基づいて算出します。対象となる土地二筆の筆界を特定する申請手数料は,まず,算定の基礎となる額を次の計算式により求めます。申請人の土地(対象土地甲)の価格(○○○万円)に相手方の土地(対象土地乙)の価格(○○○万円)を加えて2で割り,それに0.05(法務省令で定める割合)を掛けて得られた額が,算定の基礎となる額(算定基礎額)になります。その算定基礎額に応じて,次の表から算出して得た額が申請手数料となります。
具体的な計算については
「申請手数料計算シミュレーション」を開き,固定資産課税台帳に登録された土地の価格を入力すると自動的に算出されますが,筆界特定の申請をする段階で,相手方の土地(隣接土地)の評価額が不明な場合は0円として計算し,ご自身の土地(申請土地)に係る手数料のみを仮納付して申請します。追って,隣接土地に係る手数料の額をお知らせしますので,不足額を追納していただきます。
なお,申請手数料は,収入印紙により納付する必要があります。
対象土地の合計額の2分の1に5%を乗じた額 |
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単価 |
100万円までの部分 |
10万円までごと |
800円 |
100万円を超え500万円までの部分 |
20万円までごと |
800円 |
500万円を超え1000万円までの部分 |
50万円までごと |
1600円 |
1000万円を超え10億円までの部分 |
100万円までごと |
2400円 |
10億円を超え50億円までの部分 |
500万円までごと |
8000円 |
50億円を超える部分 |
1000万円までごと |
8000円 |
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共有者の一人から単独で申請することもできます。この場合には,申請人以外の共有者は関係人となり,筆界特定の手続において,意見及び資料を提出できる,実地調査または測量を行う際に立会うことができる等の一定の手続保障が与えられます。
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筆界手続において事実の調査の実施に当たっては,申請人等に立ち会う機会を与えなければならないものとされています(不動産登記法第136条第1項)。これは対象土地の測量又は実地調査が筆界特定のために最も重要な要素であることを考慮し,申請人等に対する手続保障を図ったもので,申請人等が立ち会った場合には,正確な測量を行う前提として,特定すべき筆界を構成する可能性のある点の位置(主張の位置)を確認します。このほか,紛争に至った経緯,対象土地の過去から現在に至るまでの使用状況,主張する筆界の理由及びその他筆界特定をするに当たっての参考となるべき情報をお聞きすることとなります。
しかし,仮に相手方が立ち会わなかったとしても,測量又は実地調査を行うことができなくなるものではありません。
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東京法務局では,筆界特定の申請がされてから筆界特定登記官が筆界特定をするまでに通常要すべき標準的な期間(「標準処理期間」といいます。)を,「9か月」としていますが,関係者の数や事案の複雑性・困難性により,標準処理期間を超える手続もあります。
なお,この標準処理期間は,各法務局又は地方法務局の実情に応じて,その期間が設定されています。
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筆界特定がされると,対象土地の表題部に,「平成○年○月○日筆界特定(手続番号平成○年○月○日第○号)」と記録されます。これは,対象土地である土地の登記記録を閲覧することにより,当該土地について筆界特定がされた事実を把握し,参照すべき筆界特定手続記録を知ることができるようにするためです
(筆界特定書・記録の閲覧については,Q8へ)。
なお,甲土地から乙土地を分筆する場合において,甲土地の登記記録に筆界特定がされた旨の記録があるときは,乙土地の登記記録に転写されます。また,甲土地を乙土地に合筆する合筆の登記をする場合において,甲土地の登記記録に筆界特定された旨の記録があるときは,乙土地の登記記録に移記されます。
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申請人,関係人等から提出された意見書や資料については,筆界特定手続記録に編綴されることになりますが,その筆界特定手続記録は,筆界特定がされるまでの間は,その事務を行う法務局(地図整備・筆界特定室)において保管され,筆界特定がされその手続が終了すると,対象土地を管轄する登記所で保管されることになります。筆界特定手続記録のうち,写しの交付を請求できるものは,筆界特定書及び筆界調査委員が作成した測量図,その他の筆界特定の手続において測量又は実地調査した結果に基づいて作成された図面(以下「筆界特定書等」という。)となりますので,それ以外の部分については,閲覧の請求をすることになります。
なお,筆界特定手続記録の閲覧請求については,筆界特定がされるまでの間は,申請人及び関係人のみ閲覧をすることができますが,筆界特定がされた後は,請求人が利害関係を有する部分に限り閲覧をすることが可能となります。おって,筆界特定がされた後,筆界特定手続記録の閲覧請求や筆界特定書等の写しの交付請求を行う場合は,
「筆界特定書の写し等交付請求書」に記載の上,当該手続記録を保管する登記所までご請求ください。
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筆界特定は,新たに筆界を決めるものではなく,また,その行為は,公的機関による判断の証明に留まります(行政処分ではなく,法的に不可争力をもって筆界を確定するものではありません。)。 したがって,当事者は,たとえ筆界特定された場合でも,その結果に不満があるときは,いつでも裁判所に筆界確定訴訟(境界確定訴訟)を提起することができます。 なお,筆界確定訴訟(境界確定訴訟)の判決により形成された筆界が筆界特定の結果と相違するときは,筆界特定の内容はその証明力を失います。
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筆界特定がされた筆界について筆界特定の申請があったときは,当該申請は,却下されるのが原則です(不動産登記法第132条第1項第7号本文)。しかし,「更に筆界特定をする特段の必要があると認められる場合」には,筆界特定の申請をすることが認められ(不動産登記法第132条第1項第7号ただし書),以下に掲げる事由があることが明らかな場合を指すものと解されます。
① 除斥事由がある筆界特定登記官又は筆界調査委員が筆界特定の手続に関与したこと。
② 刑事上罰すべき他人の行為により意見の提出を妨げられたこと。
③ 代理人が代理行為を行うのに必要な授権を欠いたこと。
④ 筆界特定の資料となった文書その他の物件が偽造又は変造されたものであったこと。
⑤ 申請人,関係人又は参考人の虚偽の陳述が筆界特定の資料となったこと。
⑥ 既にされた筆界特定の結論が誤っていたことが明らかになった場合。
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筆界特定の手続は,現地の調査及び測量に関する専門性が要求されるとともに,一般の法律事件についての素養が要求されていることから,次の資格を有する者が,業として筆界特定の手続の申請代理業務をすることができます。
① 土地家屋調査士(土地家屋調査士法第3条第1項第4号)
② 弁護士
③ 簡易訴訟代理等関係業務を行うことにつき認定を受けた司法書士(司法書士法第3条第2項)
ただし,司法書士ができる手続は,対象土地の価格の合計額の2分の1に100分の5を乗じた額が140万円を超えない場合に限られます。
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「筆界特定申請手続に関する一切の件」とだけ記載するのではなく,申請人の土地と筆界を求めたい土地の表示を記載し,委任する内容を具体的に記載してください
(委任状の見本)。
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申請人が会社法人等番号を有する法人である場合には,当該法人の会社法人等番号を申請情報と併せて提供します。
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東京土地家屋調査士会から出されている「土地家屋調査士のための筆界特定申請書の作成要領」をまず確認してください。
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