従業員の給与について裁判所から差押命令が送達された場合に雇用主がする供託

執行供託について

 従業員の給与債権が差し押さえられると,給与債権について債務者の立場にある雇用主(以下「第三債務者」といいます。)に,裁判所からの差押命令が送達されます。この場合に第三債務者が行う供託を執行供託といいます。 
 執行供託がされると,裁判所による配当手続が開始され,債権者に対する配当額の支払は,裁判所の委託に基づいて供託所が行うことになります。

第三債務者(雇用主)の供託について

 従業員である差押債務者が給与の「支払期に受けるべき給付」の4分の3に相当する部分(その額が33万円を超えるときは,その超過額,債権者が扶養義務等にかかる定期金債権を請求するときは,2分の1に相当する部分)については,差押えが禁止されていますので,裁判所の差押命令は,これを除いた額(以下「差押可能額」といいます。)の範囲内で行われることになります。 

(1) 給与債権について,差押命令の送達を受けた後,差押可能額を超えて新たな差押えがされることを「差押えの競合」といいます。このように,差押えが競合した場合には,第三債務者は必ず供託しなければなりません。 
(2) 「支払期に受けるべき給付」とは,給与所得から所得税,住民税及び社会保険料等法律上当然に控除すべきもの(法定控除額)を控除した実質賃金である手取額をいいます。 
 給与から天引きされている住宅ローン,団体生命保険料等の私的な契約に基づくものは原則として法定控除額には含まれず,供託金はこれらを含んだ額となります。 
(3) 供託をしたときは,第三債務者は,その事情を執行裁判所(差押命令を発した裁判所)に届けなければなりませんので御注意ください。 

供託手続

 供託をする場合には,その他の金銭供託用の供託書(供託所で無料配布)に必要事項を記載し,これに供託金を添えて,債務の履行地(給与の支払場所である本店所在地等)に所在する供託所において供託の手続を行う必要があります。一般に給与債権は,労働契約における特約がない限り,勤務地において支払うべき取立債務と解されていますので,給与の支払場所である本店所在地等に所在する供託所において供託手続を行う必要があります(インターネットを利用して供託をすることも可能です。詳しくは法務省ホームページの「オンラインによる供託手続」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji67.html)を御覧ください。)。 
 なお,供託金の提出には,現金持込(本局のみ),ペイジーを利用してATMから入金する方法,インターネットバンキングから振り込む方法,銀行窓口から振り込む方法がありますが,銀行窓口からの振込には手数料がかかります。 

供託に必要な書面

(1) 代理人が供託しようとするときは,委任状(代理権限証書)を提示してください。 
(2) 法人が供託しようとするときは,登記所の作成した代表者事項証明書又は登記事項証明書を提示してください。登記されてない法人が供託しようとするときは,関係官庁の作成した代表者の資格を証する書面を供託書に添付してください。 
(3) 関係官庁への登録のない社団又は財団の代表者又は管理人の定めのあるものが供託しようとするときは,社団又は財団の定款又は寄附行為及び代表者又は管理人の資格を証する書面を供託書に添付してください。 
(4) 提示又は添付する各証明書は3か月以内のものでなければなりません。 
(5) 供託書に添付した書類については,供託者は,供託の際に,「原本と相違ない。(氏名)印」を記載した当該書類の写しを添付して,原本の還付を請求することができます。 
(6) 供託所が当該法人の登記を管轄する供託所と同一の法務局(東京,大阪及び名古屋の各本局を除く)の場合には,登記所の作成した証明書について「簡易確認」の方法によることができます。ただし,簡易確認の方法が認められるのは,直接窓口に来庁されて手続を行う場合のみです。 
(7) 供託した者は,債権者に供託の通知をしなければならない場合がありますが(民法第495条第3項),供託通知書の発送を供託所に依頼する場合には,相手方の人数分の切手が必要です。 

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