裁判所から債権の差押命令が送達された場合に第三者としてする供託

執行供託について

 金銭債権(請負代金等)について裁判所から差押命令の送達を受けた場合,当該金銭債権の債務者(請け負った業者等,以下「第三債務者」という。)は,その金銭債権の全額に相当する金銭を債務の履行地(請負契約上の支払地等)の供託所に供託することができます(民事執行法第156条第1項)。 
 また,同一の債権(同一の請負工事等)について重複して差押命令の送達を受けた場合には,第三債務者はその金銭債権の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければなりません(同条第2項)。 

第三債務者(請け負った業者等)の供託について

 裁判所から差押命令が送達されてきた場合にする供託について,次の2つの例に基づき説明します。
(1) 1つの差押命令の送達を受けた場合
 裁判所の差押命令が第三債務者に送達されると第三債務者は弁済することが禁止されます。このような場合には,民事執行法第156条第1項により,差押えに係る金銭債権の全額に相当する金銭を供託することができます。この場合,供託するかしないかは第三債務者の判断によります。弁済期が到来し,第三債務者が供託しないまま差押命令が送達された日から1週間が経過したときは,債権者は差し押さえた債権を第三債務者から取り立てることができるようになります(民事執行法第155条第1項)。 
 このように,裁判所から差押命令の送達を受けた第三債務者は,100万円の債務を有する場合は,支払日が到来すると,100万円全額を債務の履行地の供託所に供託するか,あるいは,債権者の取立てに応じて100万円を支払うか,いずれでも差し支えないということになります。 
(2) 2つ以上の差押命令の送達を受けて差押えが競合した場合 
 100万円の金銭債権について,まず60万円の差押えを受けると,残りは40万円となりますが,この40万円を超えて新たな差押えがされることを「差押えの競合」といいます。このように,差押えが競合した場合には,第三債務者は必ず金銭債権の全額に相当する金額を供託しなければなりません。 
(3) (1),(2)の場合において,供託をしたときは,第三債務者は,その事情を執行裁判所(差押命令を発した裁判所)に届けなければなりませんので御注意ください。 

供託手続

 供託をする場合には,その他の金銭供託用の供託書(供託所で無料配布)に必要事項を記載し,これに供託金を添えて,債務の履行地(請負契約上の支払地等)に所在する供託所において供託の手続を行う必要があります(インターネットを利用して供託をすることも可能です。詳しくは法務省ホームページの「オンラインによる供託手続」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji67.html)を御覧ください。)。 
 なお,供託金の提出には,現金持込(本局のみ),ペイジーを利用してATMから入金する方法,インターネットバンキングから振り込む方法,銀行窓口から振り込む方法がありますが,銀行窓口からの振込には手数料がかかります。 

供託に必要な書面

(1) 代理人が供託しようとするときは,委任状(代理権限証書)を提示してください。 
(2) 法人が供託しようとするときは,登記所の作成した代表者事項証明書又は登記事項証明書を提示してください。登記されてない法人が供託しようとするときは,関係官庁の作成した代表者の資格を証する書面を供託書に添付してください。 
(3) 関係官庁への登録のない社団又は財団の代表者又は管理人の定めのあるものが供託しようとするときは,社団又は財団の定款又は寄附行為及び代表者又は管理人の資格を証する書面を供託書に添付してください。
(4) 提示又は添付する各証明書は3か月以内のものでなければなりません。 
(5) 供託書に添付した書類については,供託者は,供託の際に,「原本と相違ない。(氏名)印」を記載した当該書類の写しを添付して,原本の還付を請求することができます。 
(6) 供託所が当該法人の登記を管轄する供託所と同一の法務局(東京,大阪及び名古屋の各本局を除く)の場合には,登記所の作成した証明書について「簡易確認」の方法によることができます。ただし,簡易確認の方法が認められるのは,直接窓口に来庁されて手続を行う場合のみです。 
(7) 供託した者は,債権者に供託の通知をしなければならない場合がありますが(民法第495条第3項),供託通知書の発送を供託所に依頼する場合には,相手方の人数分の切手が必要です。 

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